こんにちは。高度経済成長期に整備されたインフラは耐用年数を迎えているものが多くあり、近年ではその多くのインフラの老朽化が社会的な課題となっています。

そんなインフラの中でも橋梁に関しては約72万橋近くも存在しているそうで、10年後には建設から50年以上を経過する橋梁が全体の半数を占めるとされています。

そんな現状の中、アスファルト応用加工品の製造販売や測量を行う「ニチレキ株式会社」とAI開発を行う「株式会社グリッド」が、AIと電磁波を組み合わせた技術によって非破壊で橋梁の鉄筋コンクリート床版上面の損傷箇所を判定できるシステムを開発したそうです。

AI損傷判定システム「smart 床版キャッチャー」

この非破壊で橋梁の鉄筋コンクリート床版上面の損傷箇所を判定できるシステム「smart 床版キャッチャー」は、国交省が取りまとめた「点検支援技術性能カタログ(案)」に掲載されたとのこと。

点検支援技術性能カタログとは
知識と技能を有している定期点検実施者が点検支援技術の利用を検討する際、機器などの特性を比較・整理するにあたり参考とする技術カタログ。国が定めた標準項目に対する性能値を開発者に求め、開発者から提出されたものがカタログ形式にまとめられています。

システム開発背景

耐用年数を迎えたインフラの老朽化が喫緊の課題となっているなか、建設から50年以上が経過する橋梁は72万橋の中の半数以上を占めることになります。

その為、今後維持管理費・更新費が増大することが見込まれており、定期的な点検・診断で事故や災害を未然に防ぐとともに、長寿命化により長期的に見た場合のライフサイクルコストの縮減を図る「予防保全」の考えに立った維持管理が大事です。

従来の橋梁コンクリート床版上面の点検は、舗装の撤去復旧が必要となり非常に困難だったとのこと。同社では「予防保全」を実現するために電磁波レーダーを搭載した測定車「床版キャッチャー」を平成26年に開発し、一般車両の交通の流れの中で走行しながら非破壊で床版上面の状態を判定できるシステムを確立しています。

しかし、電磁波の反射信号による判定は熟練技術者の判断で行われていたために、判定に長時間を要することによる高コストや判定技術の継承の面において課題があったそうです。

システム概要


出典:ニチレキ

その問題を解決するため、社会インフラ業界を中心に多数のAI開発プロジェクトを手掛けてきたという「株式会社グリッド」のAI技術と、同社の道路舗装材料に関する製造・工法・施工、高度なコンサルティング技術を用いて、この度の「smart 床版キャッチャー」が開発されました。

同システムは、電磁波の反射信号に熟練技術者が判定した結果を付与した教師データを基に開発したAIにより、損傷を判定。

従来では解析、報告作業は事務所にて行っていたそうですが、システム導入後は計測後に損傷範囲の判定結果がクラウドに解析速報として即時アップロードされ、調査から解析までが現場で完結するとのこと。


出典:ニチレキ

また、高精度位置情報を採用することで、計測座標を基にしたAI判定前後の作業において、これまで熟練技術者によって行われていた両車両の座標合わせ作業を自動化。

これらにより作業工数を削減し定期点検の効率化を図ることで、従来の熟練技術者による方法と比較し、調査費用を約2割のコストダウンに成功したそうです。

まとめ

このシステムですが、使っていく中で得られる損傷からまた新たに知見を反映できる「AIの再学習」ができる機能が採用されているそうです。これは熟練作業者がAI技術者の手を借りることなくAIを再学習できるもので、新たにデータを蓄積していくことによりAIの判定精度が向上していくものです。熟練技術者以外が活用できるのは勿論、熟練者が活用した際に得られた新たな知見を反映できるのはかなり有用ですね。

それにしても、今後の10年で建設から50年以上になる橋梁が約36万橋以上になるというのはかなりひっ迫した状況です。しかし橋梁に限らず他インフラ構造物に関しても多くの物が同じ状況になることが考えられます。点検は勿論、予防保全の考え方がより重要になってくるのは間違いないでしょう。