こんにちは。コンクリートダムでダムの本体を補修・補強等の維持管理や、嵩上げなどを行う際に必要となる作業に「はつり作業」があります。

作業は一般的には作業足場を架設した上での人による人力でのはつり作業や、バックホウなどの重機による作業が行われていますが、いずれにしても出来形管理、作業効率、作業の安全性の確保、環境への影響の軽減など改善する必要のある課題が多くあります。

そんな課題を解決する、はつり作業の効率化と安全性を向上させるシステムを「西松建設」「株式会社れんたま」「タグチ工業株式会社」が共同で開発したとのこと。

ダム下流面はつりシステムではつり作業の効率化と安全性向上

3社は、ダムの嵩上げ等において主に人力により行われていた下流面のはつり作業を機械化・効率化するシステムを開発。

このシステムは、コンクリートを均一な深さで切削できる装置を切削機の先端に装備し、遠隔操作でダム下流面を上昇させることで、安全かつ効率的なはつり作業を可能にしたもの。

開発背景

危険作業からの開放と作業の効率化

昨今頻発している異常気象により洪水被害などが増加しています。このような状況ではダムによる洪水調整機能が重要な役目を果たしますが、既存のダムだけでは十分な対応が難しいというのが現状。

そこで、既存のダムの貯水量増大を目的とした嵩上げ工事が計画・実施されています。嵩上げ工事とは、既設ダムの天端にコンクリートを増打ちして堤高を高くするものです。

その場合、天端だけのコンクリート打設ではダムの安全性が確保できないので、既設ダムの下流面に新たにコンクリートを貼付けて安全性を確保します。この際、既設ダムコンクリートと新設コンクリートを一体化させるために既設ダムコンクリート表面のはつり作業が発生します。

ダムコンクリートの下流面はつり作業は、足場を構築して人力により作業を行うことが一般的ですが、これをシステム化することにより安全性の確保と作業効率向上を目指すことになったそうです。

はつりシステム概要

このシステムでは、先端に切削機を取付けた装置をダム天端に設置したアンカーからワイヤーで吊り下げ、切削しながら昇降用巻き上げ機で上昇するというシステムです。

切削・移動ともに遠隔操作で行うため、切削箇所は無人で作業できるように設計されています。


出典:西松建設


出典:西松建設

特長

  1. 切削深さの調整が可能
    提案されている切削機は幅300mmで切削深さを120mmまで調整可能
  2. 一か所の切削長さは6m×0.6mを確保
    切削機は構造上一方向のみの切削なので、切削機を180°回転できる機構を用いて、往復で切削幅0.6mのはつり作業ができるようにしているとのこと。スライド用フレーム内では切削機の1往復で2mを切削。装置の横移動を極力少なくするために、スライド用フレーム自体も左右に移動させて、1ヶ所の切削作業で切削長さ6mを確保されています。
  3. 遠隔操作
    切削作業および装置の移動は各種センサー、監視用カメラの情報を基にオペレータが遠隔操作で行うため安全性が確保されています。

効果

  1. 生産性の向上
    ・人力のはつり作業に比べて、3倍以上のはつり効率があります。
    ・機械はつりのため、熟練工を必要としません。
  2. 品質向上
    ・均一な深さで、浮きや剥離のない仕上げが可能。
  3. 安全性向上
    ・遠隔操作のため、切削箇所に人が立ち入らずに安全作業が可能。

施工手順


出典:西松建設

施工能力

西松建設の愛川技術研究所において、施工能力を確認するためのコンクリート版を用いた切削能力試験を実施。


出典:西松建設

結果、切削能力が10㎡/hrと設定できることが確認されたそうです。これに斜面移動、隣の面への移動等を考慮して、施工速度は50㎡/日と想定。人力切削は同社での実績から2人/1班で、16㎡/日と算出されているそうなので、機械切削は3倍以上の施工速度が確保できることになります。

まとめ

この試験でのシステムの有用性が確認できたことで、今後は連続的はつり面が一定以上確保できるダムを対象とし活用を進めていくとのこと。

足場を架設した人力での作業と比べても圧倒的に効率が良いのは明らかですし、何より遠隔操作ができることで安全に作業ができるという部分もポイント。

現場でロボットを活用した作業の事例が増えてきていますが、人手不足や安全の面を考えると今後活用がさらに増加してくるのは間違いないでしょう。